呼吸器専門医の間質性肺炎ブログ

間質性肺炎を専門とする呼吸器内科専門医。もっと間質性肺炎を広く正しく知ってほしい。患者さんやご家族の方、間質性肺炎診療にかかわる医療従事者の方への情報提供を目的としたブログです。毎日11時に更新しています。

特発性肺線維症の総論
特発性肺線維症の治療薬
間質性肺炎の新たな治療戦略
過去の記事一覧

★特発性肺線維症(IPF)のまとめ

間質性肺炎の原因は様々であり、膠原病や吸入抗原への曝露、薬剤などが原因となりえます。

その原因を検索するため、多くの時間をかけて問診や身体診察、検査などを行いますが、中には原因が不明なものも多く存在し、これらを特発性間質性肺炎と呼んでいます。

特発性肺線維症(IPF:idiopathic pulmonary fibrosis)は特発性間質性肺炎の中でも最も高頻度で代表的な疾患です。アイピーエフと呼んでいます。

特発性肺線維症は、

  • 慢性かつ進行性に悪化する
  • 原因は不明
  • 成人で発症
  • 肺のみの病変(肺以外には病変はない)
  • 予後不良だが経過は様々で予測が難しい

ことが特徴です。

 

 

初期には無症状ですが、次第に乾いた咳や労作時の息切れを認めるようになります。特に息切れは修正MRC質問票を用いて息切れの程度を表します。

身体所見では、ばち指や背中の下の方で聴診上捻髪音を聴取します。捻髪音は、背中のこの位置で聴診器を当てると、吸気の途中から最後にかけてパリパリパリッとだんだん大きくなる音が聞こえます。 

f:id:fibrosis:20210516233252p:plain←背中のこの位置

特発性肺線維症では、およそ

  • 捻髪音は96%
  • ばち指は35%

で認めます。特に捻髪音は早期診断に有用であり、積極的に背中の音を聴診する必要があります。

 

 

典型的には、胸部CT検査でUIPパターンや蜂巣肺を呈することが特徴です。

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UIPは通常型間質性肺炎ユーアイピーと呼び、UIPパターンの特徴は、

  • 胸膜直下優位な分布(肺の一番外側)
  • 網状影(網目状の影)

を認めます。時に蜂巣肺という蜂の巣のような所見を認めますこともあります。

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これは胸部CTの写真ですが、このように肺の一番外側網目状の影を認めます。特発性肺線維症において、このような肺の線維化を示唆する所見は、広範なほど予後不良であることがわかっています。

 

 

また、経過中に予後不良急性増悪を発症することも報告されており、特発性肺線維症の主たる死因の一つとされています。急性増悪に関してはこちらの記事一覧もご覧ください。

 

 

2014年には日本人における臨床的特徴が報告されました。

  • 有病率は10万人あたり10人
  • 発症率は10万人あたり2.2人
  • 平均発症年齢は70歳、約70%が男性
  • 診断後の平均生存期間は約3年

と報告されています。

(本研究は非常に重要な報告ですが、2003年から2007年までの患者さんを対象としており、治療薬である抗線維化薬が保険適応となる前のデータですので、その解釈には注意が必要です。)

 

 

また、診断後の平均生存期間は約3年程度の極めて予後不良な疾患であり、特発性肺線維症は定期的な検査が特に重要です。

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(King TE Jr, et al. Idiopathic pulmonary fibrosis. Lancet 2011;378:1949–61.より引用改変)

 

 

特発性肺線維症の重症度GAPモデルが用いられることがあります。GAPモデルに関してはいかにまとめていますのでご覧ください。

また、日本では特発性肺線維症は指定難病(指定難病85)であり、重症度分類が定められています。重症度分類はⅠからⅣの4段階で構成され、

  • 安静時の動脈血液ガス検査の酸素濃度(安静時動脈血酸素分圧)
  • 6分間歩行試験時の酸素濃度(SpO2)

で定められています。

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<難病情報センターHP(https://www.nanbyou.or.jp/entry/302)より引用>

難病医療費助成制度は、重症度Ⅲ以上が対象です。

また重症度がⅠやⅡであっても、過去1年間において月の医療費総額が33,330円を超える月が3回以上ある場合には、軽症高額該当が利用できます。

 

 

現在日本では、治療薬として

  • ピルフェニドン(ピレスパ®)
  • ニンテダニブ(オフェブ®)

2種類の抗線維化薬が保険収載されています。これら薬剤の効果は、疾患進行を抑制すること、つまり進行を遅らせる効果が期待されています。

特発性肺線維症の治療薬に関しては、こちらの記事をどうぞ。

 

<引用文献>

Bando M, et al. A prospective survey of idiopathic interstitial pneumonias in a web registry in Japan. Respir Investig 2015;53:51–9.

Raghu G, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med 2011;183:788–824.

Lynch DA, et al. High-resolution computed tomography in idiopathic pulmonary fibrosis: diagnosis and prognosis. Am J Respir Crit Care Med 2005;172:488–93.

Natsuizaka M, et al. Epidemiologic survey of Japanese patients with idiopathic pulmonary fibrosis and investigation of ethnic differences. Am J Respir Crit Care Med 2014;190:773–9.